« 富里南中、新聞記者体験(インタビュー:順天堂大学陸上競技部) | トップページ | 富里南中学校新聞記者体験(インタビュー・神野工務店) »

2022年1月18日 (火)

富里南中新聞記者体験(インタビュー:千葉県立中央博物館 宮川尚子さん)

 2021年11月18日、富里南中学校・新聞記者体験のオンラインインタビュー、
こちらのグループは、千葉県立中央博物館・研究員の宮川尚子さんにお話しを聞きました。

20211118miyakawasama

中学生記者)本日は、富里南中学校2年の4人メンバーより、質問させていただきます。よろしくお願いします。

宮川さん)私は千葉県立中央博物館の宮川と言います。哺乳類の担当で今、今年5年目になります。哺乳類の担当で入っているんですけど、主に鯨を研究したり色々資料を集めたりっていうのをやっています。

記者)まず、この仕事に就いた理由って何ですか?

宮川さん)この仕事に就いた理由は、元々生き物が凄く好きで、生き物の進化とかっていうのに興味があって大学まで進みました。大学へ進んだ後「どういう所に就職したいかな」っていうのを色々考えた時に、このまま研究を続けたいっていう思いがまず一つありました。研究が出来る所をまず探していて、ただ研究するだけじゃ面白くないなと思って、自分が研究して見つけたことを色々な人に「こんな面白いことがあるよ」って知らせることが出来る所が良いなっていうのを探した結果、研究も出来て、そういう皆に自分が面白いと思っていることを伝えられる場所っていうのが博物館だったので、博物館に就職したいなと思い、仕事を探して、今ここにいます。

記者)ありがとうございます。ホームページの画像で、鯨の解剖をしている写真を見たんですけど、こういうことってよくやってるんですか?

宮川さん)やっています。今年は月1ぐらいでやっていますね。私は千葉県内で打ち上がったイルカとか鯨の情報をもらって、出来る限りその死んじゃったイルカとか鯨を骨とかの標本にして残してあげようと思っているので、情報をもらったら基本的にはそこまで行って解体して骨を持って帰ってきて、あと内臓とかも一部研究用に持って帰ってきて調べるというのをやっているんですけど、千葉県って凄く海岸線が長いので、他の県に比べて結構色々イルカとか鯨が打ち上がることが多いので、博物館に情報が来ないでそのまま埋められちゃうことも多いんですけど、最近は少しずつ色々な人が情報をくれるようになってきたので、今年は月1ペースで行ってます。

記者)最近月1になったっていうことですか?

宮川さん)そうですね。やっぱり「打ち上がってます」という情報をもらえないとこっちもどうしようもないというか行けないので、私がここに来るまではイルカとか鯨をやっている人がこの博物館にいなかったので、特にそういう情報を集めていますということもなかったので全然連絡来なかったんですけど、私がそういうのを集めているので、「良ければ何かあったら連絡下さい」とかって言うようになって、5年経ってようやく色々な所が連絡をくれるようになってきました。本当は多分まだまだいっぱい打ち上がってるんだと思うんですけど、今の所月1ぐらいで博物館には連絡くれるようになってる感じですね。

記者)この仕事のやり甲斐は何ですか?

宮川さん)やり甲斐は、やっぱり自分の研究を通して、イルカとか死んでしまった鯨を未来にのこしてあげることが出来ること。100年後、200年後とかに、この標本をその時生きてる人達が使って、また新しい研究とか色々な発見をしてくれると良いなと思って一生懸命やっています。今は直接役に立たないかも知れないけれど、未来の人が何か役に立ててくれるかもと思いながら集めたり、未来って繋がっているんだなと思いながらやっています。そう思うととても楽しいです。あとはお客さんとか博物館に来てくれた人たちが「ああ、自然って面白いんだな」とかって思ってくれて、「自分たちもそういうこともっと知りたいな、自然を守りたいな」みたいに思ってくれた時とかは凄く嬉しいなと思います。

記者)動物学研究家になるためには、どんな資格が必要ですか?

宮川さん)うちの博物館で働くためには、今は学芸員の資格っていうのが必要なのですが、他は特別な資格は必要ありません。ただ大学から大学院と進んで修士までは必要かなという感じなので、4年間大学に行った後に2年間修士、修士課程というのがあって、更に3年間博士課程というのがあるんですけど、「一応修士までは行っておいて下さい」というのが今のうちの博物館の資格といえば資格になるのかな。

記者)鯨やイルカのどこが好きですか?

宮川さん)鯨やイルカの、哺乳類なのに魚みたいな形になっちゃったっていうのが私は一番面白いなと思っていて、生き物の進化の歴史ってやっぱり海から始まって、色々苦労しながら陸に上がって今こうやって乾燥に耐えて私たちは陸に生きてるんですけど、「あんなに頑張って陸に上がったのに海に帰っちゃったんだ」っていう所が一番面白いなと思って、そういうイルカとか鯨の進化に関係する所を研究しています。

記者)千葉県立中央博物館ではどんな鯨の資料が見られますか?

宮川さん)今は常設展示に出てるのがマッコウクジラが一番大きくて10メートルを超えているのがあるんですけど、このマッコウクジラとコビレゴンドウっていうのと、バンドウイルカと、ツチクジラ、ミンククジラ、スナメリ、マダライルカというのが一応全身骨格で展示されています。あと、頭の骨だけでツノシマクジラっていうのが今出ています。実はこのツノシマクジラって日本に4つしか標本がないので凄い激レアなんですけど、それが2017年に行川アイランドの跡地で打ち上がってたのが発見されて、うちが収蔵したのがあるんですけど、まだ新種っていう風に期待されてから20年経っていないような凄い新しい鯨なので、標本も全国的にそんなにないので、実はしれっと混ざって凄い激レアな種類が入っています。

記者)鯨やイルカの研究をしていて悲しかったことや辛かったことはありますか?

宮川さん)悲しかったことは、やっぱりどうしても死んだものを私はやっているので、打ち上がって嬉しいと思う反面、死んじゃったっていうのは凄く悲しい所はあります。死んで腐った状態で打ち上がっているものならまだ良いんですけど、たまに生きたまま打ち上がることもあって、何とか海に戻そうとしたけど、結局ダメで死んじゃって戻ってきちゃって‥‥というのもいるので、そういうのを見ていると凄く悲しいなと思ってしまいます。あとは、持って帰ってきた骨とかをそのまま収蔵庫に入れられなくて、博物館に戻ってきてから、まだお肉とか付いてるのをちゃんと綺麗に取って油抜きして‥‥と、ちゃんと未来にのこせる形にする作業をするのですが、その標本化する時にちょっと失敗してしまい、薬を入れすぎてしまったりしてボロボロになっちゃったりとか、あとは、うちの場合、鯨って大きすぎて部屋の中で標本が作れないので外でやっているんですけど、夜中にアライグマに骨を持っていかれたり、「せっかく作ってたのに骨無くなっちゃった」みたいなこともあったりします。ちゃんと持って帰ってきたのにこっちできちんと標本にしてあげられないことがたまにどうしてもあるので、それがちょっと悲しいことですね。

記者)鯨の雌と雄の見分け方って何ですか?

宮川さん)雌と雄の見分け方は、お腹を見てあげるとわかるんですけど、逆にお腹を見ないとわからないです。で、お腹を見ると雌にだけオッパイがあったりだとか、肛門とか生殖器との距離みたいなものとか色々細かい話があるんですが、一応お腹を見てあげれば雄なのか雌なのかというのは区別は出来ます。あとはシャチみたいな大きい雄と雌、明らかに大きさが違うみたいな鯨もいたりするので、うちの展示室にいるマッコウクジラというのも、雄は大きいと17mまでいくんですけど雌だと12mまでしかいかないみたいな感じで、元々その種類で雄と雌で大きさが違うみたいな種類もいるので、そういう所で見分けるんですが、確実なのはお腹を見てあげて肛門がどこであるとかその場所を見てあげるのが一番確実です。

記者)来年鯨展を行うそうですが、具体的にどのようなことをするんですか?

宮川さん)千葉って鯨に関係する施設がすごく多いんですよ。やっぱり海岸線が長くて鯨との付き合いも元々長いので、色々な鯨に関係する施設があったりするので、そういう所から標本を借りてきたりして展示をする予定です。今回の鯨展では、千葉の鯨のことを知って欲しいというのと、また最初に少しお話しした通り、「鯨ってすごく変で面白い生き物ですよ」というのを皆さんに見てもらえるように、色々な所から標本を借りてきます。あとは、千葉って今、関東で唯一まだ捕鯨をやっている所なので、そういう捕鯨文化というのも結構オリジナルなものなので、「鯨と千葉の人って関わりが深いんですよ」というのを見せてあげようかなと思っています。縄文遺跡から出てきた鯨の骨から、今も取っている江戸時代ぐらいから始まった捕鯨の歴史とかそういうのも紹介しようかなと思っています。

記者)縄文時代の鯨の骨とか言っていましたが、一番古い骨とか鯨の関連するものって何がありますか?

宮川さん)一番古いものだと、結構遡るんですよね。縄文時代よりも前の時代に化石で出てきているものとかがあるので、そういうのが本当に古いものです。ちょっと年代まで今パッと出てこないんですけど、本当に古い縄文時代よりも前のものもあります。縄文時代は結構海が暖かくて海が侵食していた時代があるので、その頃の貝塚とかには結構イルカなどの骨が出てきたりします。イルカ、鯨の骨が出てくることが多いですね。

記者)今まで仕事をやってきて、感動したこととかはありますか?

宮川さん)感動したことは、さっき「激レアなツノシマクジラっていうのがうちの標本に入ってます」って言ったんですけど、あれを見つける時は感動というかもう大興奮で、やっぱり滅多に見られるものじゃないので、そういうのがうちの標本として入ってきてくれたっていうのがすごく嬉しかったですね。
 あとは、結構うちの博物館は夏休みとかの自由研究の相談とかで色々な子が来てくれたりするんですけど、そういう子が一生懸命うちのことを利用してくれて、「良い自由研究を作って賞を取りました」とかっていう連絡をくれたり、あとはちょっとコロナで出来なくなっていた部分もあるんですけど、色々なイベントとかもやっているので、そういうのに参加してくれた子が、本当に幼稚園ぐらいの子とかも参加してくれていて、それをきっかけに「イルカとか鯨に興味を持って自分で調べています」といったことを言ってくれたりとか、何かここをきっかけにして皆の学びがどんどん広がっていってくれるというか、自然に興味を持って、将来自分の跡を継いでくれるというか、私が作った標本を100年後、200年後にお世話してくれるような、後に引き継いでいってくれるような子たちがここからどんどん育ってくれている片鱗を見た時は「嬉しいな」と思いますね。

記者)ありがとうございます。

宮川さん)ホームページに載ってる鯨を解体してる写真ですけど、その鯨何mあると思いますか?

記者)7m

宮川さん)7はないです。

記者)先生、身長おいくつですか?

宮川さん)157センチです。

記者)じゃあ5mぐらいじゃないですか?

宮川さん)そうですね、実は4mなんですけど、ちなみにマッコウクジラの生まれたての赤ちゃんです。5mを超えてくると本当に大きな包丁とか出してこないと結構間に合わないんですけど、4mならいけるかなと思ってやっているところです。いつも解体に使っている道具っていうのが牛とかの皮を剥ぐ解体用の皮剥包丁を使っているんですけど、イルカとかだったら1人で2時間ぐらいで終わるんですけど、あれはちょっと45人がかりで1日かけて日が暮れるまでやってギリギリ終わったというぐらいな感じでした。やっぱり4mを超えてくるとなかなかキツイなという所です。
 博物館には色々な研究をしている人がいますが、例えば植物の研究をしている人とかは1日かけて植物を採ったら新聞紙に挟むんですよ。新聞紙に挟んで押し花みたいな感じで作ってリュックにどんどん入れて持って帰って‥‥みたいな感じで、博物館に戻ってきてから更に綺麗に台紙に貼り直してとかいう感じで標本を取っていたりします。また調査とかだとセンサーカメラを仕掛けてみて、夜どういう動物がどこを通っているとかっていうのを調べている人もいるし、鳥の調査では本当にずっと海岸に沿って双眼鏡でカチカチ数えていたりとかっていうのを見たりするので、人によって、担当している分野によって標本の取り方とか情報の取り方が全然違うんですけど、千葉の色々な自然とか歴史のことを確実に、今のことをちゃんと未来にのこすこと、情報をのこしてあげることを目的に、うちの博物館の人たちは皆それぞれ頑張っています。

記者)先生が中学生の頃目指しておられたことは何ですか? それは今に繋がっていますか?

宮川さん)中学生の頃は実はあまり何も考えてなかったというのもあるんですけど、そもそも理系に行くか文系に行くかっていうレベルでちゃんと決めていませんでした。幼稚園ぐらいからちょっと思っていたのはイルカのトレーナーさん。「水族館でイルカの飼育に関わるトレーナーさんになりたいな」ってボンヤリと思っていたけれど、色々勉強とかしていく内に、昔のことにすごく興味があるので生き物の進化も好きだし、後はその縄文時代とか弥生時代とかそういう遺跡にもすごく興味があって、「どっちも面白いな」と思っていたので、文系に行くか理系に行くかも何にも決められなくて、とりあえず「まあもうちょっと勉強してみるか」みたいな感じでした。「もう少し興味があること見てみて、どっちの道に行くかは決めなきゃいけない時に決めれば良いや」ぐらいな感じでしたけど、多分ずっとイルカ、鯨が好きで、水族館でイルカを見て「可愛いな」と思ったのが本当に一番最初で、結局そこに戻ってきたっていう感じですね。色々ぐるぐるしたけど、そこに戻ってきて今そのまま鯨、イルカの道にいるっていう感じです。

記者)鯨が主に食べている物って何ですか?

宮川さん)鯨の食べ物ですか? それも鯨の種類によって全然違うのでこれって決まったものがあるわけじゃないんですけど、オキアミとかってわかります? すごい小さいエビみたいな動物プランクトンがいるんですけど、そういう小ちゃいものから、シャチなんて鯨を食べちゃうぐらい。なので鯨の種類によります。ところで、世界で一番大きな動物って何だか知ってます?

記者)ジンベイザメ?

宮川さん)ジンベイザメよりもっと大きな生き物がいて、それはシロナガスクジラっていう鯨なんですけど、30mぐらいある鯨です。25mプールからはみ出ちゃうぐらい大きい生き物が海にはいるんですけど、そのシロナガスクジラが食べてる食べ物は、3センチにも満たないオキアミというエビみたいなもの。11個は小さいのですが、それを大量に食べることで30mぐらいまで大きくなっている。そんな生き物もいれば、シャチみたいにサメを食べる鯨もいる。ホオジロザメを食べてるらしいんですよね、シャチって。だからそういうのもあるし、アザラシとか食べちゃうようなのもいればイカを食べてるのとかイワシ食べてるのとかもいるので、本当に色々な物を色々な鯨が利用して食べています。土を掘り起こして食べてるようなのもいるみたいなので、結構本当にそれぞれが色々な物を食べているっていう感じですね。

記者)千葉県立中央博物館の特徴とか魅力って何ですか?

宮川さん)そうですね。自分で言うのと皆が思ってる魅力が合っているかどうかわかりませんが、うちは色んな研究をしている人が沢山いるんですよ。他の博物館に比べると研究員の数がすごく多いです。哺乳類も、私だけじゃなくてもう1人いるんですよ。そのもう1人の人は元々熊の研究者なんですけど、陸の哺乳類はその人がやっていて、海の哺乳類は私がやっているというような感じです。他の博物館とかだと、動物で1人みたいな所もあったりするので、そうすると鳥もやらなきゃいけない、虫もやらなきゃいけない、爬虫類もやらなきゃいけない、両生類もやらなきゃいけないっていう、1人でそれだけの量をカバーしている所もあれば、うちみたいに哺乳類でも2人みたいな感じでどんどん細かく細かく分けてくれているので、それだけ専門的なことが調べられるし、答えられる。とにかくその数が多くて何でもやりますよっていうのが一つ特徴だと思います。
 そうして調べたりとか資料を集めてきたりとかっていうのが特徴なんですけど、展示等の話になると、うちは博物館の建物の横に生態園っていうのがあって、そこに千葉の自然を再現している生きた木を植えたり池があったりという森の散策路的な所があります。それが一応千葉の色々な所の「海の植物ってこんな感じです」「山の上の方はこんな感じで、平地はこんな感じで」みたいな、色々な所をぎゅっと集めてきたミニ千葉みたいなのを再現してみようっていうのをやっている所です。博物館の建物の中にあるものって基本的には死んでて動かないので、そういう所で止まった状態で色々なものを勉強、勉強というか見て楽しんでもらった後に、じゃあ実際生きてるものってどんな感じなんだろうっていうのを見てもらうという、一応二つセットになっているっていう感じです。博物館にこうした場所があるのは、ゼロではないんですけれども、そんなにどこの博物館でもやっていることではないので、それが一緒に同じ施設の職員が両方やっているっていうのが一つ特徴かなと思います。

記者)本日は貴重なお話しをありがとうございました。

宮川さん)良ければ博物館にも遊びに来て下さいね。

|

« 富里南中、新聞記者体験(インタビュー:順天堂大学陸上競技部) | トップページ | 富里南中学校新聞記者体験(インタビュー・神野工務店) »

小・中学校職場体験学習」カテゴリの記事